「よく考えたら、お前の鍵をもらって、すぐ帰ればよかったんだよな」
横で呑んでいる滝本がぼそりとそう言う。
店ではカウンターの端と端に座っているし。
家でも、そんなに近寄らないし。
こんなに肩が触れそうなほど近くにいることって、そういえば、なかったな、と環奈は思っていた。
「私二次会に行きますけど。
もう帰られますか?
鍵渡しときましょうか?」
「そうだな。
あ、でも、お前、今夜はうちに泊まるのか」
「そうですねー。
近いですし、いいですか?
私、裏の鍵も持ってるんで、おやすみになられてていいですよ」
環奈がそっと鍵を渡そうとしたとき、
「はいはい、席戻ってっ。
席替え席替え~っ」
と言いながら、悦子が立ち上がって他の場所で盛り上がっていた環奈たちの周りの席の人たちを押し返してきた。



