「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

「いや~、いい会社だけど。
 そこまで社員多くないのに、わかんないとかないよね~と思ってたんだけどさ」
と西山は言う。

 滝本は嫌そうに、
「外でまで部下と関わりたくないので、話しかけるなと言ってあるんですよ」
と言う。

 環奈も白状した。

「最初にこの店に来たとき、カウンターの端に課長がいるの見て、帰ろうかなって思ったんですけど。

 猫に導かれて、ここまで来たので――」

 猫? と二人が見る。

「可愛いチャトラの猫のおかげで、ここ、見つけたんですよ」

「ああ、近所の猫かな」
と西山が言う。

「……ともかく、俺はここでの時間を大事にしたいので」

 そんな滝本の言葉に、はは、と西山は笑い、わかりました、と言う。

「じゃあ、これからも、お二人は他人ということで」

「それでお願いします」
と滝本は言い、またひとり呑みはじめた。

 環奈も甘いトマトのつづきを食べる。

 ちなみに、最初に西山を見たとき、この世で二番目に綺麗な顔だと思ったが。

 一番目はこの滝本課長だ。

 まあ――

 綺麗だというだけの話だが。

 今はこの、枝豆のエスプーマの上にのった甘いトマトの方が大事だ、と環奈は思う。