「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

「課長」
とスツールに座りかけた滝本に呼び掛けると、呼ぶなっ、という顔をしながらも、環奈を振り返る。

「なんで新築三階建ての家、買ったんですか?」

 はあ? という顔をしたあとで、滝本は、
「……知り合いに買わされたんだ」
と言う。

 姉じゃないんですか、と思いながら、環奈はカクテルを呑んだ。

 いつも、ここにいる間は他人のフリをしろと言うので、そのままなにも話さなかったのだが。

 しばらくして、滝本が、いきなりこちらを向いた。

「姉に買わされたんだよ」
と言う。

 ……何故、今っ。

 そして、なんで、そんな微妙な嘘つきましたっ?

 ほんとうにこの人、謎すぎるっ、と環奈は思っていたのだが。

 トイレに滝本が立ったとき、西山が小声で言ってきた。

「今の謎の嘘の理由、わかったぞ」

 ……いや、お酒作りながら、ずっとそれ考えてたんですか?
と環奈は思う。