「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

「あ、飲み終わりましたー。
 一緒に片付けましょうか?」
と環奈は笑顔だ。

「い、いいわ。
 まだ飲んでるから。

 それより、見たのよ。

 役所であんたと滝本課長が婚姻届を……」

 環奈はパウチを何故か細かく折りたたみはじめる。

 何故だかわからないが、自分も細かく折りたたまれそうな気がした。

「何故、会社に黙ってるの?
 人事には届けを出したの?

 言わないんだったら、私がみんなにバラ……っ」

「……あの、余計なこと言うと、課長に殺されますよ」

 今、あんたに殺されそうな気配が漂ってるんだけどっ!?

 さっきまでの可憐な笑顔は何処にもない。
 いつも愛想がいいのでわからなかったが。

 笑わないと整いすぎた顔が際立ち。
 まるで氷の女王のようで、辺りが冷え冷えとした空気に包まれる。

「このままあなたを野放しにすると、私が課長にやられるので。
 私が今、あなたをやるべきですかね……?」

 いや、この夫婦、どっちも怖いっ。

 っていうか、パウチって、そんなに細かく折りたためたっけっ!?

 環奈の手にあるその小さな塊を、まるで潰された自分のように麻沙子は眺める。