「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

「昔、親の前でメールアドレスと電話番号を交換させられて。
 出会う連絡とかはそれで充分だったので」

「昨日のエジプトのスペシャルすごかったなとかメッセージアプリで語ったりしないのか」

「だから、なんで、私より仲良くなってるんですか……」

 十年の歳月を一気に超えてきましたねっ、と環奈は言う。

「でもまあ、聖一さんとは、そんな感じの付き合いでしかなかったので。
 課長が挨拶に行っても、うちの親、あっさりでしたね」

「ああ、俺もビックリだ。
 もっと娘は渡さん、みたいな感じかと思ったのに」

「聖一さんが、滝本さんのことをいい人な上に出世頭だって言ってくれてたみたいですよ。

 まあ、いらない許嫁を引き取ってくれた人なんで、よく言ってくれたんでしょうね」

「それだと俺自身の本当の評価は、もっと低いみたいに聞こえるんだが」

 人力車に乗ると言ったのに、なんとなく道を歩きながら、滝本は言った。

「聖一は、ほんとうによくできた男だ。
 お前にはもったいない」

「だから、フラれたんじゃないですか」