「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

「いえいえ。
 偽装結婚でも、通る道は同じですよ」

 そう言いながらガイドブックを見ている環奈に滝本は、
「お前、旅行に出た嬉しさで、なにも考えてないな」
と言ってきた。

「はい」
と環奈はすぐに認める。

「仕事も日常生活も大変、いっぱいいっぱい。

 そんな毎日を送っている私は、目の前に楽しいことがあるときは、深く考えずに遊び尽くすことにしていますっ」

 課長もぜひっ、と環奈は熱く語った。

「ストレス発散できたら、部下に当たらなくなることでしょうっ」

「なんだその占いみたいなのっ。
 そもそも、部下に当たってるんじゃないっ。

 お前が一度注意したことをまたやったりするから叱ってるんだろっ」
と結局怒られたが、真っ先にみかんジュースの蛇口のあるところに連れていってくれた。

 というか、たまたま覗いた店の奥にもみかんジュースの蛇口のコーナーがあったのだ。

 いろんなところにあるらしい。

「なんか学校の手洗い場みたいなところから、みかんが出るイメージだったんですけど。
 すごいお洒落な空間でしたね」

 もっと混雑している店もあるようだったが。

 ここは奥まっているせいか。

 客も多くなく、モダンでレトロな雰囲気がとてもいい。