そんなわけで松山にいる。
「いや~、旅行いいですねえっ。
松山見えてきましたよっ」
フェリーに乗って環奈はご機嫌だ。
潮風に当たりながら、昼の日差しにきらめく海を見ていると、ついつい、テンションが上がってくる。
「なに食べて、なに飲みましょうかっ?」
「……もう酒の心配か」
「いやいや。
愛媛で飲むと言ったら、まずは、蛇口から出るみかんジュースですよっ」
と環奈はスマホでガイドブックを見ながら言う。
「北海道にはオニオンスープが出る蛇口があるらしいですけどね」
「お前は呑気だな」
スーツで風に吹かれている滝本の口調は重く、犯人を追い詰めようとしている刑事のようだ。
何故、スーツかと言うと、ここに来る前、環奈の両親に挨拶してきたからだ。
聖一が環奈の親に滝本のことをしゃべってしまったのだ。
滝本は溜息をついて言う。
「なんだろうな、これ。
……偽装結婚でいいんだよな?」
なんか普通に結婚するための段階を踏んでないか? と滝本は言う。



