そう続けて、環奈が自宅にも来るわけないし、この店にも来ないとわかっていて、なんとなく、滝本は隠れ家カフェに行った。
今日はひとり静かに酒を呑もう――。
だが、常連の中谷が、
「あっれ~? 滝本くん。
今日、環奈ちゃん来ないよ。
さっき、表通りで会ったら、友だちと呑みに行くって言ってたから」
と言ってくる。
「いや、今日はひとりで静かに……」
「滝本さん、今日、環奈さん、来ないよ。
昨日、そう言ってたじゃん」
今度は、新浜が奥から現れて言う。
「だから、今日はひとりで静かに……」
そう言いかけたとき、違う客が入ってきて、人見知りの新浜は、ぴゅっと逃げた。
「いらっしゃいませ」
と西山が振り返って言う。
……新浜さんは、腕はいいかもしれないが、ひとりで店はやれないな、と思ったあとで気がついた。
入ってきた男は知らない客ではなかった。
「ああ、猫に誘われてきた人」
とその男を見て、西山が言う。
「はは。
覚えててくださいましたか?」
と笑う爽やかなそのイケメンは、環奈の元許嫁、筑紫聖一だった。



