花守、昨日、泊まったから、今日は泊まらないのだろうか?
新浜さんに習った料理をひとつ、作ってみようかと思ったんだが。
そんなことを考えながら、滝本は職場のロビーを歩いていた。
新浜は、
「まかない飯程度なら教えてあげますよ。
それ以上は教えられないです。
環奈さんの胃袋がつかめなくなるので」
胃袋一個ですからね、と言っていた。
まあ、腕が足りないそうだから、聞いたところでその通りにはできないだろうが、と思いながら、滝本は言った。
「……花守の胃がふたつあればいいんだが」
滝本の頭の中で、環奈の胃を新浜とひとつずつ、つかんでいた。
いや、自分は別に環奈の胃袋をつかみたいわけではないのだが。
「……牛とか羊とか、バッファローじゃないんで、そう何個もないですよ」
と言っていた環奈が、今、ロビーの端に見えた。
上司なんだから、呼んで話してもいいはずだよな、
と思いながら、滝本は環奈に向かい、手招きしたが、環奈はこちらを見たのに無視して行ってしまう。
いや、上司を無視とかあるかっ?



