ガラスの器にミョウガがのった茄子の煮浸し。
口に入れると、じゅわっと、いい出汁があふれて来て、うーむ、と環奈は唸る。
「こんなにシンプルな料理なのに、何故、こんなに美味しいんでしょうね」
「ああ。
ごまかしが効かない料理なのに、こんなに美味いとはっ!」
とカウンターの反対側の端から滝本が相槌を打つ。
「……もう一緒に座れよ」
西山はそう言ったが。
今日は、環奈と滝本の間に座っている常連の老夫婦もひとつ空けて座っていた。
「いや、これ、なかなか新鮮でいいですよ。
お二人を真似て離れて座ってみたんですけど」
とご主人の方が笑って言う。
「なんというか。
妻を他の客だと思ってみると、客観的に見られて、いろいろ新しい発見があるというか」
「そうねえ。
改めて見て、私、ほんとうにあなたが好みの人だなと思ったわ」
ふふふ、と奥様も微笑んでいる。
滝本が、
「我々は別に新鮮味を求めて、離れて座っているわけではないんですが。
単に、部下の顔をプライベートでまで見たくないと言うか」
と弁解をはじめたが。
まあまあ、またまた、と言った感じに、老夫婦はその言葉を流し、笑っていた。
……照れて言っていると思っているのかもしれませんが、その人はマジですよ、と思いながら、環奈は茄子をまた口に入れる。
やばい。
あとちょっとしかない。
もうちょっと味わっていたいのにっ。
ああでも、このあとも、美味しい料理が次々出てくるのなら、この辺で終わりなのがお腹的にはいいのかっ、と環奈が平和な苦悩をはじめたところで、
「そういえば、昨日、すごいイケメンが来たんだ」
唐突に西山がそんな話をはじめた。



