ある日の仕事帰り。
疲れていた花守環奈は、ふと、いつもと違う場所で足を止めた。
足元を横切ったチャトラの猫が歩いていくのをなんとなく目で追っていると、普段は目に入らない家と家の隙間が視界に入った。
――ん?
今まで気がつかなかったけど。
この向こう、店みたいなものがある。
細いその隙間から、灯りのともった雰囲気のある店と看板が見えた。
そういえば、この家の間の通路。
普通に道みたいだから、通っていいのかな。
いや、横向きにならないと通れない……。
この狭さ、建築基準法的にいいのか。
この辺り、みんな古い家だからなのかな?
と思いながら、環奈は通ってみた。
これ以上、太ったら通れなさそうだ。
これは……
ここを通れる人しか、この店には来られないという話っ?
と思いながら出た突き当たりのそこには、白い木造洋風建築の店があった。
古い建物みたいだな。
店を囲む低い木々は生垣のようになっていて、そこにライトアップされた看板があった。
『隠れ家カフェ』
……自分で言う。
場所はともかく。
ライトアップされているし、あまり隠れてない、と思いながら、環奈は白い砂利の敷き詰められた前庭に入ってみる。



