「エレノア、俺の血を飲んでください」
そう、とびきり甘い声が聞こえる。
いつもの無表情で、けれど、柔らかい瞳で、私をまっすぐと見つめる綺麗な人。
そんな彼が悪魔のように、優しく私に囁くのだ。
私は今、禁断症状に陥っている状態だ。
ローゼルの善意に身を任せ、ローゼルの血を吸う行為は間違いなく、ローゼルの死へと繋がる。
私は当然、ローゼルを殺したくない。
ローゼルの提案に、弱々しくふるふると首を横に振る。
だが、ローゼルは引き下がらなかった。
「何故ですか?俺の血が欲しくて欲しくてたまらないのでしょう?アナタが求めるのならいくらでもあげられます。だから、どうか我慢しないで」
ローゼルが物欲しげに私を見つめる。
その瞳があまりにも熱っぽくて、それでいて献身的で胸が痛くなった。
ローゼルは私に大きな恩義を感じている。
こんな時でも、そんな私に恩を返すためにただただまっすぐだ。
私に恩を返せるのなら、自分の身がどうなってもいいのだ。
…そんなローゼルを利用して、ここまで堕ちたのは、バケモノになってしまったのは、間違いなく、私の選択でだ。
ローゼルが私を引きずり堕としたのではない。
だから、ローゼルは何も悪くない。



