「こちらには古くから伝わるあらゆる異形の伝説が記されています。嘘か本当かわからないものが集められたものです」
司書の説明を聞きながら、その本を受け取る。
古びた焦茶の皮の表紙には、古語で〝異形伝説〟と重々しく書かれていた。
「ちょっと他にもローゼル様のご要望に合った本を探してきます。情報はたくさんあればあるほどいいですから」
「ありがとうございます」
離れていく司書にお礼を言い、俺はその場で早速本のページをめくり始める。
目次には、伝説としてかつていた〝らしい〟異形たちの名前が連なっていた。
魔女に、狼男に、透明人間。
人魚に、妖精に、吸血鬼など。
ここに記されている中で、現代に確実に存在しているのは、おそらく吸血鬼だけだろう。
こちらが気づいていないだけで、存在している可能性ももちろんあるが。
目次から早速、吸血鬼のページを開く。
俺たちが知っている吸血鬼は、血を欲する本能がある以外、力も寿命も何もかも人間と同じ、というものだ。
しかし、ここに記されている吸血鬼は、太陽の光に弱く、空を飛び、何百年も生きる、という、まさに伝説の異形として扱われていた。
作り話のような話にさっと目を通し、どんどん読み進めていく。



