檻の羊

「指輪、綺麗ですね」

六花先生の左手薬指で婚約指輪がキラキラ瞬いている。
学校でつけているのは初めて見た。

「ありがとう」

「羊先生ってやっぱり優しいんですか」

「ええ。とても」

「どこが好きなんですか」

「そんなこと生徒には言えません」

「ケチ。私は六花先生と気持ち、共有したいのにな」

「共有、って」

「…六花先生。私ね、好きなんですよ。めーくんのことが」

「めーくん」

「メェメェ羊のめーくん…って、あれ?羊ってメェメェ鳴くんだっけ?それってヤギだっけ」

「紅羽さん?」

私は教室へ。
六花先生は二年生の教室よりも更に二階下の職員室へ。

二人でゆっくりと階段を下る。
二年生の教室の階まで来て、ここでお別れのはずだった。

踊り場で一瞬、私達は見つめ合った。

一歩、階段に踏み出した六花先生を呼び止める。

「もう一度よく見せてください。指輪」

「え」

教材を抱える六花先生の腕。
先生の左手を(すく)うように手を伸ばす。

左手の薬指をグッと掴んだまま捻って、

六花先生の身体を落とした。