檻の羊

「ギプス、まだ取れないの」

「八月下旬頃だって」

「じゃあ夏祭りも行けないの?」

八月十五日に地元で夏祭りが開催される。
去年は風子ちゃんと秋夜くんと三人で行って、一緒に金魚すくいをしたけれど、
誰の家にも金魚を育てられる環境が無いから、またみんなでビニールプールの中に戻したことを思い出した。

「松葉杖でも行けるけどやめとく。人混みでそれってしんどそうだし」

「残念だね。そう言えばインターハイは?応援とか行かないの」

「うちからは誰も出場できなかったからなぁ」

「そっかぁ。それも残念だったね」

「エース不在だからしょうがないな」

「ごめんね…」

「いやいやふうちゃん、ブラックジョークだから」

ニカッと笑った秋夜くんは最近また以前のような明るさを取り戻したように見える。
二人の仲も良好そうで、″あんな事″があったのに凄いな、とは素直に感じた。

困難を乗り越えることで言えば私とめーくんだって凄いけど。

「じゃあ今年は風子ちゃんのこと一人占めしちゃおっかなー」

「えー。ふうちゃんは俺が居なきゃ寂しいでしょ」

「私こそクレハちゃんを一人占めできるなんて光栄だなぁ」

浮気者ー!って言いながら風子ちゃんの肩を揺らす秋夜くんを見ながら、
本当はめーくんを誘いたいんだけどなぁなんて考えていた。

でも百パーセント学校の人に見られちゃうだろうから我慢。
卒業さえすれば今よりもっと二人だけの時間が増えると思えば全然平気だった。