檻の羊

「すぐ戻るね」

それだけを告げて私は図書室を出た。
学校司書の先生が貸出カウンターに座っていたし、風子ちゃんが嫌がらせをされることもないだろう。

私の足は真っ直ぐに技術室へと向かった。

私のクラスの担任、白居羊(はくいひつじ)先生は技術担当教師で、技術室は先生…、めーくんのお城なのだ。

「めーくん」

「宵。まだ残ってたのか」

宵、って呼んでくれるめーくんの低過ぎない声が大好き。

白居羊先生は去年から新任教師としてうちの中学校に配属された。
この学校歴で言うと私達はお揃いなのだ。
二十四歳になった今年、初めてクラスを受け持つことになって、私のクラスの二年三組の担任になった。

一年生の頃から技術でめーくんの授業を受けていた。

男性にしては白い肌と細い指。
だけど男性特有の、節々の骨骨した感じと、工具を扱うなめらかさ。

シルバーフレームの眼鏡の奥には夜を連想させるような黒い瞳と長い睫毛。
時々ぴくんって動く喉仏に男性を感じて、私はすぐに先生に夢中になった。