檻の羊

校門の前には秋夜くんが既に待っていた。

六月の夕方。
湿気を含んだ生ぬるい風が吹いている。
秋夜くんの赤茶けたストレートヘアをサラサラと揺らす。
遠目から見てもやっぱり絵になる人。
だけど私は腑に落ちない。

風子ちゃんは何事も無かったかのように笑顔で秋夜くんに「お待たせ」って言った。

「ふうちゃん!待っててくれてありがとう」

「いやいや。逆に私が待たせちゃったね」

「ぜーんぜん。今みんなと解散したとこだから」

「ちょっと。私にはありがとうって無いわけ?」

「クレハはどうせ羊先生んとこだろ」

「うっさいな」

見透かしたような笑顔。
彼女が大変な目に遭っていたことも知らないで余裕そうに私を茶化すところも、今日は気に食わない。

風子ちゃんが秋夜くんには言わないでって言ったから私も黙っていた。

だけど自分が思っているほど人間は強くはできていない気がする。
いつか風子ちゃんの我慢の糸が切れて、本当に大切だった想いまで見失ってしまいそうで怖かった。