檻の羊

「お待たせ」

「本当に待ちました」

私の言葉に、めーくんは腕時計を見て不思議そうな顔をした。

昼休みに入ってからまだ十分くらいしか経っていない。

すぐに来てくれたことは分かっているけれど私は千時間以上くらい待った気分だから。

それでも本当に耐えて良かった。
お待たせ、なんてデートの待ち合わせみたい。
それが学校内でも、私は幸せだった。

めーくんが技術室の鍵を開ける。
お弁当も食べないで急いで来たけれど空腹なんて感じない。
むしろめーくんと一緒に居られて胸がいっぱいだ。

「カーテン、閉めてもいいですか」

「なんで?」

技術室は一階にある。
窓の外からは運動場が丸見えで、昼休みに遊んでいる生徒の姿がしっかりと認識できる。

「一応、二人で居るところが見えないほうがいいと思って」

「なんで」

「やだなぁ。余計な噂立てられて困るのは先生でしょ?」

「あ…ああ。そうだな」

めーくんが警戒していることは分かった。
私と二人きりでいることによほど抵抗があるのだろう。

無理もない。
昨日あんなことしちゃったんだから。

昨日の行いを反省しているわけではないんだけど。
だって本当に六花先生へのお見舞いのつもりだったから。

「先生、見て」

「え?」

「私、今日は手ぶらでしょ?それにさすがに学校で花火はできないかなぁ。すぐ騒ぎになって先生との時間、邪魔されちゃ嫌だもん」

めーくんは笑わなかった。

もしかして「結婚祝い」を傷つけたこと、さすがに許してもらえないのかな。
六花先生の親がどう思おうが、もうめーくんには関係のないことなのに。