檻の羊

キュッとくちびるを結んで俯く風子ちゃんと、庇うように背中をさする秋夜くんを残して陸上部の倉庫を出ていった。

これも私に見せつける為の演出だろうか。
まだ大人にもなっていないくせに、自分達はここまで辿り着けているというアピールにしか見えない。

きっと風子ちゃんは言うのだろう。
大切なものが沢山あることの何がおかしいのって。

風子ちゃんならきっと、そんな究極の選択しか許されない世界を憎むのだろう。
私と秋夜くんを天秤に掛けた時、どちらかを捨てなきゃいけない選択に心を痛めるくらいなら自分が犠牲になってでも必死で両方を守ろうとするはずだ。

そんな綺麗事に酔っている暇はない。

間違っているのは風子ちゃんと秋夜くんじゃなくて、
この世界の全てが間違っている。

十四歳の私。
二十四歳のめーくん。
先生と生徒。
始めから濃く引かれていた境界線。

誰よりもめーくんを愛せるのは私なのに、こんな世界に仕立てあげた神様が全部悪い。

だからめーくんもおかしくなっちゃったんだ。

早く。

早く私が新しい命を与えてあげなくちゃ。
私がめーくんを修理してあげなくちゃ。

世界は何も救われない。