UN-EQUAL ―不揃いな色の旋律 ―

そしてそれから数十分、入学式が開始されていた。

『新入生代表挨拶。本日欠席の生徒会長・若狭(わかさ) (あや)に変わりまして、生徒会副会長・塔坂(とうさか) 光琉(ひかる)

「はい」

その放送とともに立ち上がったのは、放送席の隣の在校生用と見られる席に座っていた一人の男子生徒。

低く透き通った声。

壇上に副会長さんが上がった瞬間、少しピリッとした空気が張り詰める。

淀みない動作で式辞の紙を広げる。
マイクに手をかけた後、式辞の紙を持ち直して口を開いた。

「えー、新入生の皆さん、この度は……うおっ!」

式辞の紙を広げようとしながら話し出すと、紙がハラリと床に舞い落ちてしまった。

さっきとは違う雰囲気で、体育館内がピリッとした空気に凍りつく。

教職員の席では、数人の教師が「あちゃー」という顔をして少し腰を浮かしていた。

――が、副会長は全く動じず続けた。

『すみません、急な代役だったもので指先まで緊張してしまったみたいです。それに、自分にはこんな堅苦しい挨拶は見合わなかったようですね……会長が書いてくれた台本にも嫌がられてしまいました』

彼は少し困ったように眉根を寄せながら、悪戯っ子のような声で言った。

その一言で会場が湧き上がる。

会場のそこら中から笑いが起きて、あっという間に糸のように張り詰めていた空気が緩まった。

すご、すぎる。
流石って感じなのかな?

その後もアドリブで挨拶を続けると、お辞儀をした後で式辞の紙を拾い上げて何事もなかったかのように自分の席に戻った。

僕は唖然としてそれを見ていた。

ミスさえも味方にして、張り詰めて空気を緩ませて笑顔にする。
きっと本当に緊張していたはずなのに、ピンチをチャンスに変えて乗り切った。

僕には到底できない技だ……きっとあの場所に立つだけで緊張してしまってパニックを起こすのに、あんなミスをしてしまったらきっと喉も開かなくなって黙り込んでしまう。
尊敬するな……。

そんな憧れを抱いているうちに、入学式は幕を閉じていた。