UN-EQUAL ―不揃いな色の旋律 ―

蓋を開け、手を合わせる。

「いただきます」

そう静かに呟き、一口食べた。

結弦の完璧で優しい味に、思わず口がほころんで強張っていた体の力が抜ける。

今日高校(ここ)に来てから、初めて苦しくないと感じた。

けど、明日は行きづらいな……。
結弦には悪いけど、もう高校も……。

そう考えながら弁当を食べ終え、思いつきで屋上の中心に移動する。

学校に行っていなかったときの癖で、ついスマホとイヤホンを取り出していた。
いつの間にか手は動き、いつも聞いていた曲を選択していた。

バラード調の前奏が流れて、ゆったりとした声が耳の奥に響いた。

聞き馴染みのある音が僕の胸を軽くするように響く。

始めは切なくて儚い曲調だったのが、サビに近づくにつれて音がどんどんと盛り上がっていく。
そして、サビに入る前の部分……僕が一番勇気を貰える場所。

「大丈夫」なんて 嘘でもいいから 自分を信じてみたいと 胸の奥が熱くなる

そのメロディを聴いた瞬間、いつの間にか僕は口ずさんでいた。

どんどん声は大きくなり、サビの終わりには僕の声は爆音のイヤホンを通り抜けて耳を貫いた。

教室で出した、低く押し殺したような声なんて忘れて。

ここは誰もいない聖域。
誰にも聞かれない。誰にも邪魔されない。

高く。儚く。どこまでも真っ直ぐで。
僕は喉を開いて大声で歌った。

今日半日、押し殺していた声が喉から滑り出して。
開放感溢れる屋上に、空に、溶けていく。

音楽に触れている間の僕は『影野 律』でも何者でもないと言う錯覚に陥った。

曲の終わり際、一番高いメロディを一オクターブ高くする。
最後の切なくも優しい歌詞を、歌い切り。

気がついたら最後の伴奏も口ずさんでいた。

ジャーンと柔らかくも強い音で終わる曲。
数秒の沈黙が、音楽に余韻を与える。

その余韻に浸っていると――

「それだーーーー!!!!」

叫びのような大声が屋上に響き渡った。