お礼をしたいと言う壱心くんの気持ちを何度もことわるのも失礼かと思い、私は小さく頷くことにした。
すると、壱心くんは嬉しそうに頷き返す。
「じゃあ私も一旦部屋に行くね」
「あ、後ひとつお願いがあるんだ」
「お願──」
って……え?
振り向いた瞬間に伸びてきた手に目を見開く。
あまりの速さに風が顔をかすめ、手からかばんがすべり落ちた。
「えっ……あの」
いわゆる、壁ドン……状態。
すぐ目の前に壱心くんの顔があって……状況が理解出来ないのに心臓はドキリと鳴った。
驚きのせいか、するどい視線と目が交差しているせいなのか……。
「今朝のこと。駐車場にいた君のことは見たよ。だからおれは急いで君と鉢合わせて顔を見るために道を引き返した。……そのせいであのハプニングがあったわけだけどさ……」
"おれも駐車場にいた奴らと同じだって、気付いてるよね?"──



