意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

だが。
手紙は、
そこで終わらなかった。

文面は急激に重くなる。
『皇帝クレオールは、
当然ながら激怒しています。
ファティマ姉さまの脱出を「帝国への反逆」と断じ、
恐怖政治をさらに強めました。
連日の粛清。
理不尽な徴税。
密告を奨励する制度。
国民の不満は、
もはや隠しようもなく高まり、
貴族たちですら、
皇帝から距離を取り始めています。』

ラジワの手がわずかに震えた。
「……やっぱり。兄は、絶対に自分を省みない」

アウレリオの表情も険しくなる。
「暴君は、自分が恐れられている間は安全だと思い込む。だが――恐怖は、必ず限界を迎える」

そして手紙の最後。
そこには、
ビンセント自身の、
静かだが揺るぎない言葉があった。

『このままでは、
ドラゴニア帝国は内から崩壊してしまう。
私自身は、権力には興味はありません。
けれど――
国民がこれ以上踏みにじられるのを、
黙って見過ごすことはできない。
国のために、
私は立ち上がるつもりです。』

読み終えた後、
部屋には重い沈黙が落ちた。

ラジワは、
ゆっくりと顔を上げる。
その瞳にはもう迷いはなかった。
「……ビンセントは、本気ね」

「あぁ」
アウレリオもきっぱりと頷く。
「そして――」
彼は、窓の外を見やる。

「それを察知したクレオールが、黙っているはずがない」