意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

朝食の余韻が残る広間で、
アウレリオは腕を組んだまま、
どこか不機嫌そうに黙っていた。

それに気づいたラジワは、
一瞬きょとんとし――
すぐに、くすっと笑う。

(……ああ、なるほど)
ラジワは一歩前に出て、
きちんとした声音で言った。

「改めて紹介するわね、アウレリオ」

ラジワはマルクスを指し示す。
「この方は、私の弟ビンセントの側近なの」

アウレリオの視線が、
すっとマルクスに向く。
「弟の乳母の息子で、弟とは子どもの頃からずっと一緒に育ったの。そういうわけだから……」
少し照れたように笑って、
「私とも、幼なじみなのよ」

マルクスは一歩下がり、
きちんと礼をした。
「ラジワ様には、ビンセント様と共に――」
そしてわずかに苦笑を浮かべて、
「大変、厳しく躾けていただきました。良い思い出です」

一瞬の沈黙。
そして――
(……なんだ。恋敵とか、そういう話じゃないのか)
アウレリオの中で、
緊張がすっと解けた。

咳払いを一つ。
「……そうだったのか」
声の調子が、
明らかに柔らかくなる。
「こちらこそ、妻を守ってくれたことに感謝する」

マルクスは、
わずかに目を見開き――
深く頭を下げた。
「恐れ入ります、殿下」

ラジワは、
その様子を見て満足そうに頷く。