意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

そこへ。

「失礼いたします」
低く落ち着いた声とともに、
マルクスが入室した。

ラジワはぱっと顔を輝かせる。
「マルクス!」

「ご無事で何よりです、ラジワ様」
深く礼をするマルクス。
「体調は問題ありませんか?」

「ええ。本当に……ありがとう」
ラジワは少し照れた笑みを浮かべる。
「あなたのおかげで、私はここにいられる」

マルクスは静かに首を振った。
「いえ。俺は命令を果たしただけです」

そんな2人の様子を、
じっと見つめる視線が一つ。
――アウレリオ。

(……距離、近くないか?)
胸の奥で、ちり、と小さな火が灯る。

ラジワはそんな夫の変化に気付かず、
マルクスに楽しそうに話しかけた。
「あの子ね、普段はシスコンであれだけど」
くすっと笑う。
「ここぞって時は、本当に頼りになるのよね。また今度、
きちんと御礼をしないと」

マルクスは少しだけ表情を緩めた。
「ビンセント様は……ファティマ様への愛情が、確かに強烈ですが……ラジワ様のことも、心から慕っておられます」

マルクスは肩をすくめてから、
真面目な顔で続ける。
「『救い出すまで帰ってくるな』と厳命されましたので」

ラジワは胸に手を当てる。
「そんな極端なところ……あの子らしいわね」

二人で小さく笑い合う。
――その様子を見て。
アウレリオの中で、
嫉妬の炎が、
静かにメラメラと燃え上がっていた。
(……なるほど。命の恩人、か)
(……だからといって、あそこまで打ち解ける必要はあるのか?)

表情は至って穏やか。
だが、
内心は別だった。