意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

「で、相手は?」

ラジワは一瞬だけ視線を伏せた。
「……名前は、言えない。でも、宮廷の人よ」
「そう」
それ以上、追及はなかった。

ファティマはラジワの表情を静かに見つめ、
そして小さく微笑んだ。
「ラジワ。あなた、今とても良い顔をしているわ」
「本当?」
「ええ。希望を持っている人の顔」

姉のその言葉に、
胸の奥がじんわりと温かくなる。

「私ね」
ラジワは意を決したように続けた。

「姉妹たちが次々に嫁いでいくのを見てきたでしょう?
 だから……どこかで思っていたの」

「私は、違うって」

ファティマは黙って聞いている。

「他の姉妹たちみたいに、国を背負って嫁ぐ必要はない。
 私は、選ばれなくてもいいって。
 ……選ばれなくて、いいって」
最後の言葉は、
ほとんど囁きだった。

ファティマはゆっくりと息を吐いた。
「ラジワ」

その声は姉としてのものだった。
「あなたは、何も間違っていないわ」

ラジワは、はっと顔を上げる。
「え……?」

「恋をして、未来を夢見ることも。
 誰かと共に生きたいと願うことも。
 王女である前に、人として当然よ」

ファティマは少しだけ目を細めた。
「羨ましいくらい」

その一言に、
ラジワの胸がちくりと痛んだ。