意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

「……消えた、だと?」
アウレリオの低い声が、
重苦しい執務室に落ちた。
「はい。王太子妃を攫おうとした実行犯と思しき者たちは、もう跡形もなく」
報告する騎士たちの表情も硬い。

「馬車、武器、偽装用の衣服――
すべて処分されていました。
帝国側が関与していたとしても、直接の証拠はもう……」

アウレリオは拳を机に叩きつけた。
「……クレオールめ……!」
歯噛みする。
糾弾したい。
問い詰めたい。
だが、証拠がない。

(やはりあいつは狡猾だ……最初から、足がつかぬように)

――だが。
彼の怒りは、
次第に冷たい決意へと変わっていく。

「いい」
静かな声。
「ならば、“証拠がなくても動ける盤面”を作るだけだ。」

アウレリオは顔を上げ、
部下たちを真っ直ぐ見据える。
「帝国の動向を徹底的に洗え。
同時に、ビンセント殿下との連携を強化する」

そして、最後に言い切る。
「二度と――俺の妻に指一本、触れさせない」

部下たちが全員退出したのを見届けて、
アウレリオも執務室をあとにする。
無事に帰ってきた、
何よりも大切なあの人のところへ。