意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

「……その指輪……」
アウレリオの喉がかすれる。
見間違えるはずがない。
結婚の夜。
彼が自ら選び、
ラジワの指に通した――

「こちらは、ラジワ様から預かったものです」
マルクスは、
静かに、しかしはっきりと言った。
「ラジワ様はご無事です」

その瞬間。
アウレリオは、
玉座から立ち上がっていた。
「本当にラジワは無事なのか!?」
声が荒れる。
「今、どこにいる!
誰に攫われた!?怪我は!?
なぜ指輪を外した!?」
畳みかけるような問い。
理性など、
もはやどこにもない。

「落ち着いてください、殿下」
マルクスは、
一歩も引かずに答える。
「ラジワ様は今、
月の女神ルナリアの神殿におられます」

「昨夜、帝国の密偵による拉致事件が発生しました。辻馬車事故を装い、連れ去る手筈だったのです」

アウレリオの瞳が怒りに燃える。
「……クレオールめ……」
その名を、
噛み潰すように呟く。

「ラジワ様は、間一髪で逃れました。ですが、密偵は既にラジワ様のおられる神殿の周辺まで来ています。当初は私がこちらまでお連れする手はずでしたが、ラジワ様を外に出す方が危険だと判断しました。」

マルクスは真っ直ぐアウレリオを見据える。
「一刻も早く、殿下ご自身が迎えに行くべきです。ラジワ様は貴方を信じて待っておられます。」

アウレリオは迷わなかった。
「馬を出せ!!」
執務室に雷のような声が落ちる。

「殿下――まずは護衛を!」

「必要ない!」

アウレリオは指輪を強く握りしめる。
「俺が、妻を迎えに行く」