後方では、
マルクスは石柱の陰に身を潜め、
歯を食いしばっていた。
(くそ……!)
(今、俺が出れば……ラジワ様がここにいると逆にあいつらに知らせるようなものだし。神官の言葉を無駄にするわけにはいかない)
彼は剣に手を伸ばし、
しかし、動かない。
神官が、
両手を広げて立ちはだかる。
「お引き取りください」
「夜明け前に神域を穢す者には、
女神の祝福は二度と届きません」
しかし、
神官の制止は彼らに届かなかった。
「力ずくで行くぞ」
密偵の一人が、
石門に手をかけた。
重厚な石が、
ぎ、と音を立てる。
その瞬間――
ゴォ……ッ
丘を渡る風が、
突如、強く吹き荒れた。
松明の火が一斉に消え、
男たちの視界が闇に沈む。
「なっ……!」
石門に触れていた男が、
呻き声を上げ、弾き飛ばされる。
見えない何かに、
拒まれたかのように。
神官の声が、
闇の中で響く。
「……月の女神は、
今もここを見守っておられます」
「これ以上踏み込めば、
その身に何が起ころうとも、
我らは責任を負いません」
密偵たちは、
思わず後ずさった。
誰かが小さく呟く。
「……本物、か」
夜明けの光が、
丘の向こうから差し込み始める。
やがて、
男たちは歯噛みしながら退いた。
「……引くぞ」
「別の手を考える」
足音が遠ざかり、
再び、静寂が戻る。
神殿には、
朝の気配だけが満ちていた。
石柱の陰で、
マルクスは静かに息を吐く。
(……助かった)
対する神殿の奥では。
ラジワは、
何も知らぬまま、
朝の祈りの鐘を聞いていた。
(ルナリア様、私を守ってくださってありがとうございました……)
マルクスは石柱の陰に身を潜め、
歯を食いしばっていた。
(くそ……!)
(今、俺が出れば……ラジワ様がここにいると逆にあいつらに知らせるようなものだし。神官の言葉を無駄にするわけにはいかない)
彼は剣に手を伸ばし、
しかし、動かない。
神官が、
両手を広げて立ちはだかる。
「お引き取りください」
「夜明け前に神域を穢す者には、
女神の祝福は二度と届きません」
しかし、
神官の制止は彼らに届かなかった。
「力ずくで行くぞ」
密偵の一人が、
石門に手をかけた。
重厚な石が、
ぎ、と音を立てる。
その瞬間――
ゴォ……ッ
丘を渡る風が、
突如、強く吹き荒れた。
松明の火が一斉に消え、
男たちの視界が闇に沈む。
「なっ……!」
石門に触れていた男が、
呻き声を上げ、弾き飛ばされる。
見えない何かに、
拒まれたかのように。
神官の声が、
闇の中で響く。
「……月の女神は、
今もここを見守っておられます」
「これ以上踏み込めば、
その身に何が起ころうとも、
我らは責任を負いません」
密偵たちは、
思わず後ずさった。
誰かが小さく呟く。
「……本物、か」
夜明けの光が、
丘の向こうから差し込み始める。
やがて、
男たちは歯噛みしながら退いた。
「……引くぞ」
「別の手を考える」
足音が遠ざかり、
再び、静寂が戻る。
神殿には、
朝の気配だけが満ちていた。
石柱の陰で、
マルクスは静かに息を吐く。
(……助かった)
対する神殿の奥では。
ラジワは、
何も知らぬまま、
朝の祈りの鐘を聞いていた。
(ルナリア様、私を守ってくださってありがとうございました……)



