意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

ビンセントが接触した男は、
皇帝クレオールの側近の一人――
ソリオ・アルバート・ディ・クラウゼン。

表向きは忠実な官僚。
だがビンセントは知っていた。
(この男は、ラジワ姉さまを愛していた)

夜の回廊。
人払いを済ませたのち、
ビンセントは単刀直入に切り出す。
「ソリオ。
皇帝が、ラジワ姉さまに何をするつもりか――
知っているな?」

ソリオの肩がびくりと跳ねる。
「……な、何のことでしょう」

「とぼけるな」
ビンセントの声は、低く鋭い。
「ファティマ姉さまを軟禁し、
次はラジワ姉さまを帝国の手の届く場所へ置く。
お前ほど近くにいて、何も知らないはずがない」

沈黙。

やがて、ソリオは唇を噛みしめ、
震える声で言った。
「……もし陛下にバレたら……
私は……」

その瞬間、
ビンセントは一歩踏み出した。
「その程度か?」
強い視線がソリオを射抜く。

「お前の、
ラジワ姉さまへの気持ちは――
その程度だったのか!?」

ソリオの目が、揺れる。
過去。
約束。
叶わなかった未来。

長い沈黙の末、
彼は、崩れるように膝をついた。