その日から、
ソラリス王国の空気は、
わずかに変わった。
城下で見かける見慣れない旅人。
港に停泊する、所属不明の船。
市場で交わされる、意味ありげな視線。
だがそれは、
あまりにも巧妙で、
表立って怪しまれることはなかった。
密偵たちは、
「交易商」「学者」「巡礼者」
として潜り込み、
ただ、観察する。
ラジワが外出する曜日。
城門を通る時刻。
護衛の人数。
そして――
アウレリオが政務で城を空ける日。
「……この日だな」
密偵の一人が、地図に印を付ける。
目的は一つ。
ソラリス領内での“事故”
あるいは
国境付近での“保護”。
その頃、
ラジワはまだ知らなかった。
自分を包む幸せな日常のすぐ外側で、
帝国の闇が、
音もなく距離を詰めていることを。
そしてクレオールは、
一人、満足げに呟いた。
「拒否されてこそ、奪う意味がある」
「そうだろう、ラジワ?」
太陽の光の届かぬ場所で、
皇帝の笑みは、
あまりにも冷たく歪んでいた。
ソラリス王国の空気は、
わずかに変わった。
城下で見かける見慣れない旅人。
港に停泊する、所属不明の船。
市場で交わされる、意味ありげな視線。
だがそれは、
あまりにも巧妙で、
表立って怪しまれることはなかった。
密偵たちは、
「交易商」「学者」「巡礼者」
として潜り込み、
ただ、観察する。
ラジワが外出する曜日。
城門を通る時刻。
護衛の人数。
そして――
アウレリオが政務で城を空ける日。
「……この日だな」
密偵の一人が、地図に印を付ける。
目的は一つ。
ソラリス領内での“事故”
あるいは
国境付近での“保護”。
その頃、
ラジワはまだ知らなかった。
自分を包む幸せな日常のすぐ外側で、
帝国の闇が、
音もなく距離を詰めていることを。
そしてクレオールは、
一人、満足げに呟いた。
「拒否されてこそ、奪う意味がある」
「そうだろう、ラジワ?」
太陽の光の届かぬ場所で、
皇帝の笑みは、
あまりにも冷たく歪んでいた。



