玉座の間に、
人は誰もいなかった。
重厚な扉が閉ざされた瞬間、
クレオールは、
手にしていた金杯を床に叩きつけた。
鈍い音。
砕け散る宝石。
「――拒否、だと?」
低い声が、怒りで歪む。
「他国の王太子ごときが……
皇帝であるこの俺の“お願い”を?」
彼の脳裏に浮かぶのは、
アウレリオのあの目だ。
恐れも、迷いもない。
あくまで対等――
いや、それ以上に妹を守る者の目。
「……気に入らんな」
ラジワが、
帝国の影から完全に離れようとしている。
それが、どうしようもなく腹立たしかった。
「所詮は女だ。
手の届くところに置けば、また元の顔に戻る」
クレオールはゆっくりと口角を上げる。
「拒否されただけで、諦めると思ったか?」
彼は静かに呼びかけた。
「――来い」
すると柱の影から、
音もなく数人の男が現れる。
黒衣。
帝国の闇を歩く者たち
――密偵である。
「ソラリス王国王太子妃、
ラジワ・ドラゴニアの動向を探れ」
「行動パターン、護衛の配置、
それから王太子の不在時間もだ」
淡々と命じる声には、
もはや兄としての感情は一切ない。
「最終的には――
帝国に“戻って”もらう」
密偵の一人が、低く問う。
「……強制、ですか」
クレオールは、即答した。
「当然だ」
そして、冷たく言い放つ。
「彼女は俺の妹であり、帝国の血だ」
「帝国が必要とするなら、
どこにいようと――連れ戻す」
人は誰もいなかった。
重厚な扉が閉ざされた瞬間、
クレオールは、
手にしていた金杯を床に叩きつけた。
鈍い音。
砕け散る宝石。
「――拒否、だと?」
低い声が、怒りで歪む。
「他国の王太子ごときが……
皇帝であるこの俺の“お願い”を?」
彼の脳裏に浮かぶのは、
アウレリオのあの目だ。
恐れも、迷いもない。
あくまで対等――
いや、それ以上に妹を守る者の目。
「……気に入らんな」
ラジワが、
帝国の影から完全に離れようとしている。
それが、どうしようもなく腹立たしかった。
「所詮は女だ。
手の届くところに置けば、また元の顔に戻る」
クレオールはゆっくりと口角を上げる。
「拒否されただけで、諦めると思ったか?」
彼は静かに呼びかけた。
「――来い」
すると柱の影から、
音もなく数人の男が現れる。
黒衣。
帝国の闇を歩く者たち
――密偵である。
「ソラリス王国王太子妃、
ラジワ・ドラゴニアの動向を探れ」
「行動パターン、護衛の配置、
それから王太子の不在時間もだ」
淡々と命じる声には、
もはや兄としての感情は一切ない。
「最終的には――
帝国に“戻って”もらう」
密偵の一人が、低く問う。
「……強制、ですか」
クレオールは、即答した。
「当然だ」
そして、冷たく言い放つ。
「彼女は俺の妹であり、帝国の血だ」
「帝国が必要とするなら、
どこにいようと――連れ戻す」



