意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

帝国からの正式要求は、
――「常駐命令」だった。

それは、
あまりにも丁重な書式で届いた。
金の縁取りがされた帝国の公文書。
文面は礼儀正しく、婉曲で、
だが内容は明確だった。

「皇帝陛下のご意向により、
皇女ラジワ殿下には、
一定期間、帝国にご滞在いただきたく存じます。
皇族間の親交と、両国の安定のため――」

「……ふざけるな」
書状を読み終えた瞬間、
アウレリオの低い声が、
執務室に落ちた。

声を荒げたわけではない。
だが、その一言には一切の余地がなかった。

ラジワは紙を見つめたまま、
指先を震わせる。
「“一定期間”ですって……
帰す気なんて、最初からないに決まってるわ!」

人質として、
帝国の影の中に置こうとしている。

「兄は……本気で、私を縛る気だわ」
ラジワの声は、
怒りと恐怖が入り混じっていた。

その横で、
アウレリオは静かに立ち上がる。
「この要求は、
外交でも、礼節でもない」 

彼は書状を机に置き、
一字一句を切り捨てるように言った。
「これは命令だ。
そして――他国の王太子妃を、
皇帝の管理下に置こうとする暴挙だ」

ラジワが、思わず彼を見る。
アウレリオの横顔には、
これまで見たことのない冷たさが宿っていた。