意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

「怖くないの?」
思わず、そう尋ねていた。

「皇女を望むことが、
 どれほど無謀か、分かっているでしょう」

セリオは、少し困ったように笑った。
「怖いですよ。正直に言えば」
でも、と続ける。
「それでも、あなたを諦める理由にはならない」

その言葉に、
胸の奥が熱くなる。
ラジワはゆっくりと噴水の縁に腰を下ろした。
「ねえ、セリオ」
「はい」
「もし……もし、陛下が首を縦に振らなかったら?」
彼は、すぐには答えなかった。

しばらく考えるように沈黙し、
それから静かに言った。
「それでも、あなたの意思を最優先します」
「私の……?」
「皇女としてではなく、
 一人の女性としての、あなたの選択を」
ラジワの喉が、きゅっと鳴った。

(そんな言葉、誰もくれなかった)

遠くで鐘の音が響く。
夜が、確実に更けていく。

「ラジワ」
セリオは一歩、距離を詰めた。
「私は、あなたと未来を築きたい。
 隠れる関係ではなく、
 胸を張って、隣に立てる形で」
月明かりの下、
彼の表情は真剣そのものだった。

ラジワはゆっくりと頷いた。
「……約束よ」
そう言って、そっと手を差し出す。

セリオは一瞬だけ迷い、
それからその手を両手で包み込んだ。
指先が、わずかに震えている。
それが、彼の覚悟の証だった。