意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

その日の午後、
アウレリオは書状をラジワに見せた。

ラジワは一読すると、
表情を曇らせる。
「……戴冠式、ね」
声は落ち着いているが、
指先が、
紙の端を強くつまんでいる。

「行かない、という選択肢は……ないわよね」

「ないな」
アウレリオは即答した。

「君の実兄の即位式だ。
欠席すれば、それ自体が敵意と取られる」

「でしょうね……」
ラジワは小さく息を吐いた。

「クレオールは形式を重んじる人よ。
だからこそ、こういう“正しい形”で来る」

彼女は、書状の例の一節に視線を落とす。
「この文面……私を、まるでまだ帝国の側の人間だと思っている」

「思っている、というより――」
アウレリオは言葉を選びながら続ける。
「そう扱いたいんだろう」

一瞬、沈黙が落ちる。

ラジワはふっと自嘲気味に笑った。
「嫌な予感しかしないわね」

「奇遇だな。俺もだ」

だが、
だからといって拒否はできない。
今はまだ、何も起きていないから。

アウレリオはラジワの手を取る。
「王太子夫妻として、出席する。それが最善だ」

「ええ……」
ラジワは頷き、
そして静かに言った。
「でも、覚悟はしておきましょう。
兄はきっと―ただの祝宴では終わらせない」

アウレリオはその言葉を否定しなかった。

窓の外では、
ソラリスの太陽が、
変わらず明るく輝いている。
だがその光は、
これから二人が向かう帝国の空に、
同じように差すとは限らなかった。

――これは、
正式な招待という名の、
最初の圧力。
嵐は、まだ姿を見せていない。
だが確実に、近づいていた。