意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

しん、と
部屋に静けさが戻った、
その時――

「……ぐぅ」

あまりにも、
はっきりとした音だった。

一瞬、
時が止まる。

「…………」

ラジワの頬が、
みるみる赤く染まった。
「……っ」

思わず、
お腹を押さえる。
「ご、ごめんなさい……!」

慌てて言い訳を探し、
視線を泳がせる。

「その……少し、安心したら……」
声がどんどん小さくなる。
「……お腹が空いちゃって……」

もじもじと、指先を絡める。

沈黙。

次の瞬間――
「ははっ!」

アウレリオが堪えきれず笑った。
低くもなく、嘲るでもなく。
さながら太陽のように、明るく。

「正直でいい」
目尻を下げて、楽しそうに言う。

「泣いて、怒って、気を張り続けていたんだ」
「空腹になるのは、当然だろう」

そして、
すっと立ち上がる。
「今日も、料理人が自信作を用意している」

ラジワに手を差し出した。
「一緒に食べに行こう」
「……え?」
「今夜は、“王太子と妃”じゃない」

少しだけ、いたずらっぽく笑う。
「ただの腹を空かせた二人だ」
ラジワは、
一瞬きょとんとして――
ふっと、笑った。

「……そうね」
差し出された手を取る。

「そのほうが、気楽だわ」
二人は、並んで歩き出す。
夜の廊下を、肩を並べて。