意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

その言葉に、
ラジワは息を呑んだ。
「……怒って、くれるの?」
小さな問い。

アウレリオは、
答える代わりに――
彼女の頬にそっと手を添えた。
涙の跡を親指で拭う。

「当たり前だ」
静かに、しかし迷いなく。
「俺の妻を駒扱いする男がいるなら」
「それが兄だろうが、皇太子だろうが――」

金色の瞳が暗く燃える。
「俺は、敵だと認識する」

ラジワの喉が、鳴る。
「……私、ずいぶんと重い話を……」
「違う」
アウレリオは即座に否定する。
「これは、俺たちの話だ」

アウレリオはラジワの額に、
軽く額を触れさせる。
「忘れるな」
「俺は――お前の味方だ」

さりげなく。
けれど、
絶対に揺るがない声音。
「お前が、誰に傷つけられようと。ここでは、誰にも指一本触れさせない」

ラジワの胸が、
ぎゅっと締めつけられる。
(……ああ)
(この人は……)

初めてだった。
怒りを、一緒に抱いてくれる人。
悲しみを、
“当然のもの”として受け止めてくれる人。

「……ありがとう」
かすれた声。

アウレリオは、微笑った。
「礼は、お前が安心して眠れるようになってからでいい」