意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

――嘘だ。
アウレリオは小さく息をついた。

「俺のお姫様は、嘘が下手だな」
ラジワの前にしゃがみ込み、
視線を合わせる。
「目尻が赤い」
静かな声。
「……泣いていたのか?」

その一言で。
堰が切れた。

「……っ」
ラジワの唇が震え、次の瞬間――
「……ひっ……」

声を殺そうとするほど、
涙が溢れる。
ぽろぽろと止まらない。

(……ああ)
アウレリオは迷わなかった。
そっと、
ラジワの手から手紙を抜き取ることはせず。
ただ――彼女を抱き寄せた。

「いい」
低く、包み込むように。
「今は、話さなくていい」
ラジワの額が、彼の胸に当たる。

「……っ、わたし……」
言葉にならない嗚咽。

アウレリオは、
背中をゆっくり撫でる。
「泣いていい。君は、一人で耐える必要はない」

その腕は、強すぎず、
逃げ道を塞がない。
それなのに――
逃げられないほど、温かい。

「……ひどいの」
ラジワは震える声で呟いた。
「……本当に……」

それ以上、言えなかった。
それでいい、と
アウレリオは理解した。
「俺は、君の夫だ」
静かに、しかし確かに。
「理由を知らなくても、
 味方でいる権利はあるだろう?」

ラジワは初めて。
彼の胸に、
自分からしがみついた。
指先が衣を掴む。

(……ああ)
アウレリオは、
彼女の小さな頭に頬を寄せる。
(やっと、捕まえてくれた)

夜の窓辺で、
太陽の国の王太子と皇女は――
言葉よりも深いもので、
距離を縮めていた。