意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

夕食の時刻を過ぎても、
ラジワは姿を見せなかった。

(……妙だな)
アウレリオは、
食卓に用意された二人分の料理に視線を落とす。

(あれほど律儀な彼女が、何の連絡もなく欠席するとは)
胸の奥で、
小さな違和感が広がった。

――もしかして。
(俺の気を引こうとしている?)
そんな考えが、
一瞬だけよぎる。

(……いや)
首を振り、立ち上がる。
(それなら、もっと分かりやすいことをする)

静かな足取りで、
ラジワの私室へ向かった。
扉をノックし、
返事を待たずに開ける。

「ラジワ?」

そこにいたのは――
想像とはまるで違う姿だった。

窓辺の椅子に力なく腰掛け、
夜の庭園を、ただ見つめている。
(……気が抜けている)
その背中は、
いつもの誇り高い皇女のものではなかった。

「……あの」
アウレリオは、
声の調子を落とす。

「ディナーに来ないから、様子を見に来たんだが……」

ラジワは、
ゆっくりと振り向いた。
「まぁ……」
どこか他人事のように。

「もう、そんな時間だったの」
その手にはくしゃりと握られた紙。
――手紙だ。

(……なるほど)
アウレリオは、
何も言わず一歩近づく。
「何か……良くない知らせでもあったのか?」

「何でもないわ」
即答だった。
「つい、ぼーっとしていただけ」