――まったく。
庭園の回廊を歩きながら、
アウレリオは小さく息をついた。
(あれで冷たくしているつもりか)
視線を逸らし、
素っ気ない言葉を選び、
わざと距離を取る。
(全部、顔に出ている)
怒っているのか。
拗ねているのか。
それとも――焦っているのか。
(どれも正解だな)
昨夜から、
いや――婚姻証明書に署名した、
あの瞬間から。
ラジワはずっと、
必死だ。
自分の誇りと、
傷ついた心と、
そして“妻”という立場の間で、
必死に均衡を取ろうとしている。
(可愛いな)
無意識に唇が緩む。
冷淡にすれば、
引き留められると思ったのだろう。
少し着飾れば、
動揺させられると思ったのだろう。
無視すれば、
追ってくると信じていたのだろう。
(どれも、俺のことを意識している証拠だ)
そして、
それを自覚していないところが、
何よりも。
(あれほど気丈な姫が、こんなにも分かりやすいとは)
ラジワは強い。
誇り高く、
聡明で、
折れることを嫌う。
だが――
(だからこそ)
無理に奪えば、
きっと彼女は心を閉ざす。
命令ではなく。
義務でもなく。
(自分から、俺を選ばせたい)
それだけだ。
(……意地を張り続けろ、ラジワ)
(怒ってもいい、焦ってもいい)
(だがいつか、その小さな拳をほどいて)
(自分から、俺に触れてくるまで)
アウレリオは、
回廊の先で立ち止まる。
太陽が、
高く昇っていた。
(その時が来たら)
(俺は、二度と手を離さない)
「……やれやれ」
小さく笑う。
「本当に――可愛いなぁ、強情なお姫様」
庭園の回廊を歩きながら、
アウレリオは小さく息をついた。
(あれで冷たくしているつもりか)
視線を逸らし、
素っ気ない言葉を選び、
わざと距離を取る。
(全部、顔に出ている)
怒っているのか。
拗ねているのか。
それとも――焦っているのか。
(どれも正解だな)
昨夜から、
いや――婚姻証明書に署名した、
あの瞬間から。
ラジワはずっと、
必死だ。
自分の誇りと、
傷ついた心と、
そして“妻”という立場の間で、
必死に均衡を取ろうとしている。
(可愛いな)
無意識に唇が緩む。
冷淡にすれば、
引き留められると思ったのだろう。
少し着飾れば、
動揺させられると思ったのだろう。
無視すれば、
追ってくると信じていたのだろう。
(どれも、俺のことを意識している証拠だ)
そして、
それを自覚していないところが、
何よりも。
(あれほど気丈な姫が、こんなにも分かりやすいとは)
ラジワは強い。
誇り高く、
聡明で、
折れることを嫌う。
だが――
(だからこそ)
無理に奪えば、
きっと彼女は心を閉ざす。
命令ではなく。
義務でもなく。
(自分から、俺を選ばせたい)
それだけだ。
(……意地を張り続けろ、ラジワ)
(怒ってもいい、焦ってもいい)
(だがいつか、その小さな拳をほどいて)
(自分から、俺に触れてくるまで)
アウレリオは、
回廊の先で立ち止まる。
太陽が、
高く昇っていた。
(その時が来たら)
(俺は、二度と手を離さない)
「……やれやれ」
小さく笑う。
「本当に――可愛いなぁ、強情なお姫様」



