意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

窓辺に差し込む夕陽が、
二人の影を長く伸ばす。

「……セリオ」
「はい」
「もし、もしもだけど」

言葉を探しながらラジワは続けた。
「私が、この宮廷を出るとしたら。
 それは――姉たちのような形ではないと、思うの」

セリオは、すぐには答えなかった。
だがその沈黙は、拒絶ではない。

「私は、時期を見ています」
彼は静かに言った。

「陛下の信頼を、もう少し確かなものにしてから。
 正式に願い出るつもりです」

ラジワの目が、わずかに見開かれる。
「本当に……?」

「ええ。あなたを、誰かの“駒”にはしたくない」

その言葉に、
胸の奥で何かがほどけるような気がした。

(私は、選ばれるかもしれない)
初めて抱いた、
根拠のない、けれど甘い期待。

ラジワはその夜、
自分の未来を、
ほんの少しだけ信じて眠りについた。
――この幸福が、
どれほど脆いものかも知らずに。