意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

――結局。

ラジワは一睡もできないまま、
薄明るい朝を迎える。

鏡に映った自分の目元に、
うっすらと浮かぶ影。

(……最悪)

「おはよう」
背後から聞こえてくる穏やかな声。

「昨日は……よく眠れ――」
ラジワの顔を見て、
一瞬、言葉を切る。
「……なかったみたいだな」

ラジワはかっとなって言い返した。
「誰のせいだと、思ってるのよ!」

完全に、八つ当たりだ。
アウレリオは少しだけ目を細め、
困ったように笑う。

「朝からそんなにカッカするな」
そして、さらっと続けた。
「せっかくの美貌が台無しだよ、奥さん」
――さらっと。
本当にさらっと。

ラジワは一瞬、言葉を失う。
「……なっ……」

「寝不足は美容の大敵だ」
アウレリオは近づき、
ためらいなく、しかしいやらしさの欠片もなく
ラジワの頬にそっと触れた。
あたたかい指。

「今からでも、ゆっくり休むといい」
そのまま、
抗議する間も与えず、
ラジワをベッドへと導く。
そしてブランケットを丁寧にかける。
まるで――
怒り狂う妻をなだめる、
長年連れ添った夫のように。

「……っ」
ラジワは、言葉が出ない。
(……ずるい)
欲しがらせて与えない。
突き放して、でも、ちゃんと守る。

(こんなの……
 嫌でも、意識するじゃない……)

アウレリオは最後に一言。
「おやすみ。今度こそ」
そう言って、部屋を出ていった。
残されたラジワは、
ブランケットを握りしめながら、
心臓の音を数えていた。

怒りもある。
惨めさもある。
――でも。
確実に、
何かが、動き始めていた。