意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

「違う」
アウレリオは迷いなく言った。

「晴天の日。
 太陽が天に満ち、神が我々を見下ろすその時」

「その前で、初めて誓う」
――あなたを、妻として迎える、と。
その言葉は、
言外に含まれていた。

「だから、儀式は延期する」
「天候が整うまで?」
「そうだ」

ラジワは思わず笑ってしまいそうになる。
(……なんなのよ、それ)
政治結婚のはずなのに。
利用されるだけのはずなのに。
(こんな……面倒くさいほど、真面目なんて)

「……じゃあ」
ラジワは少しだけ視線を逸らしながら言う。
「それまでは?」

アウレリオは答えを急がなかった。
「それまでは、未完成の夫婦だ」
その言葉は、不思議と――
冷たくなかった。

そして、その夜。
ラジワは、
与えられた寝室で一人、立ち尽くしていた。
(未完成の夫婦……)
書類上は妻。
でも、神の前では、まだ。

(よく分からないけど……ずるい)
期待も、
拒絶も、
どちらも許されている状態。

扉が開く音。
アウレリオが入ってくる。
そして――
彼は宣言通り、ラジワに触れない。

静かに、当然のように、
ベッドに横になり、目を閉じる。
(……え?)
(本当に……何もしないの?)