意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

初めて足を踏み入れたソラリス王国は、
眩しかった。

港に降り立った瞬間、
ラジワは思わず目を細めた。

白い石造りの街並み。
高く澄んだ空。
そして、惜しみなく降り注ぐ陽光。

(皮肉ね……)
こんなにも明るい国へ、
自分は人生を奪われたまま連れてこられたのだ。

歓迎の鐘が鳴り、
人々の歓声が港を満たす。

「ソラリスへようこそ、ラジワ皇女殿下」
儀礼的な挨拶。
形式的な笑顔。

ラジワは背筋を伸ばし、
完璧な王女の仮面をかぶった。
――怒りは、見せない。
――弱さも、見せない。
それが、彼女の選んだ戦い方だった。

王宮へ向かう馬車の中。
揺れに身を任せながら、
ラジワは窓の外を見つめていた。

(ここが、私の新しい檻)
そう思った、そのとき。
馬車が止まる。
「皇女殿下。王太子殿下がお迎えに参りました」

胸の奥がひくりと鳴る。
――ソラリス王国王太子。
自分の“夫になる男”。
期待など、欠片もない。

馬車の扉が静かに開く。
逆光の中に、
一人の男が立っていた。

金色に近い淡い髪。
落ち着いた佇まい。
まっすぐで、騒がしくない視線。

この人が私の夫。
アウレリオ、
太陽の名を持つ王太子は、
静かに一礼した。

「長旅、お疲れでしょう。
 ソラリス王国王太子、アウレリオです」
その声は、低く、穏やかだった。
――あまりにも、普通で。

それが、
かえってラジワを苛立たせた。
(同情?それとも、所有の挨拶?)