意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

そして弟のビンセントは、
今日も騒がしい。

「姉上! 先ほどの会議、聞きましたか?
 ファティマ姉様の発言は実に――」
「ええ、聞いていたわ。声が大きいから」
ラジワがそう返すと、
ビンセントは一瞬きょとんとし、
すぐに拗ねたような顔をした。

(本当に、この子は……)
ファティマに対しては過剰なほど忠誠心を示し、
時に盲目的ですらあるその態度に、
ラジワは呆れながらも、
弟の優秀さ自体は疑っていなかった。
――感情さえ絡まなければ。

だからこそ、
彼が姉に向ける過剰な執着だけは、
どうしても受け入れられない。

そしてもう一人の兄弟。
兄クレオール。
彼とは、昔からうまくいかなかった。
声を荒げて喧嘩をした記憶はない。

だが、視線が交わるたびに、
互いに何かを測り合っているような、
冷たい沈黙が流れる。
「合理」と「正しさ」。
それを重んじる者同士だからこそ、
感情を交える余地がなかった。

ラジワは無意識のうちに、
兄と同じ考え方をしている自分に気づき、
それをひそかに嫌悪していた。