意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

「ラジワ」
ファティマはやがて静かに口を開く。

「私は、特別なんかじゃないのよ」

「嘘……」

「選ばれたのではなく、皇帝陛下の望むように私も使われているだけ。」

その言葉は、
あまりにも重かった。

「それでも、私は自分でその道を選んだ」

ラジワの胸が締めつけられる。

(私は……?)

「……ごめんなさい」
ようやくそう言えた。

ファティマは妹を優しく抱き寄せた。
「大丈夫」

けれどその声には、
かすかな距離があった。

それが何よりラジワを傷つけた。

その夜。
自室に戻ったラジワは、
一通の手紙を取り出した。

『セリオへ。』

何度も、書いては消し、
書いては破いた。

最後に残ったのは、
短い一文だけ。
――『ごめんなさい。約束を、守れなくなりました。』

涙が紙を濡らす。

選ばれたのは、未来ではない。
犠牲だった。
ラジワは、初めて理解した。
――この国で、
自分は「守られる存在」ではなかったのだと。