意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

皇帝の呼び出しは唐突だった。

朝の鐘が鳴り終わる前、
侍従が無表情で告げた。

「ラジワ殿下、陛下がお呼びです」
その声を聞いた瞬間、
胸の奥で何かが、静かに沈んだ。

(ついに来たんだわ)

理由は分かっていた。
分かっていたからこそ、
足取りが重い。

玉座の間は、いつもより人が少なかった。
皇帝の傍らには、数名の重臣。
そして――クレオール。

兄は、ラジワを見ても表情を変えなかった。

「ラジワ」
皇帝の声は、疲れていた。
老いと重圧が滲む声音。

「帝国は今、危機にある」
「……存じております」
「ソラリス王国との同盟を、より確かなものにする必要がある」

一語一句、予想通り。
それでも、
最後の言葉だけは聞きたくなかった。

「お前には、ソラリス王国王太子のもとへ嫁いでもらう」
――命令だった。

相談ではない。
選択肢もない。

「……嫌です」
気づけばそう口にしていた。

まさかの反論に
玉座の間が静まり返る。

「私は、そのような話を受けるつもりはありません」

皇帝の眉がわずかに動いた。
「理由を聞こう」

ラジワは唇を噛んだ。

言えるわけがない。
セリオの名を。
約束した未来を。

「私は……」
声が震える。
「私は、誰かの都合で切り捨てられる存在ではありません」

重臣の一人が咳払いをした。
「殿下。これは、帝国の存亡に関わる――」

「だからって!」
思わず声を荒げていた。
「だからって、私の人生を差し出せというのですか!?」