意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

……世界が、終わった。

いや、正確に言うなら。
世界は今日、姉上を失った。

海の国らしく、
真っ青な海を臨む祭壇。
柔らかな光に包まれ、
祝福の音楽が流れる中――
ビンセントは最前列で、
完全に喪に服していた。

(……美しすぎる)
ヴェールを被ったファティマが、
ゆっくりと歩いてくる。
その一歩一歩が、
ビンセントの心を踏み砕く。

(姉上が……結婚……?誰の許可を得た?いや、許可なんて出してない。出してないのに……!)

隣に立つデクラン王子。
うん、悪くない。
あの豚オヤジに比べれば、むしろ優良物件だ。
人格、家柄、誠実さ――全部分かっている。
分かっているが。
それとこれとは話が別だ。

「……姉上……」
すすり泣きが止まらない。
ハンカチはすでにびしょ濡れ。
周囲の参列者たちが、
ちらちらと距離を取る。
「お嫁に……行くなんて……勿体ない……」
「姉上ほどの方が……一人の男に……」

完全に負のオーラ。
祝福の場にふさわしくない怨念レベル。

――そこへ。
「もう、やめなさいよ……」
隣から、呆れた声。
ラジワだった。

「今日はお姉様の晴れの日なのよ?あんたが一番ちゃんと祝わなくてどうするの」

「だって……だってラジワ姉さま……姉上が……姉上が……」

「はいはい。気持ちは分かるけど、落ち着きなさい」
肩をぽんぽん叩いて慰めるが、
効果は薄い。