意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

初夏の陽光が、
ソラリス王宮の白い回廊を照らしていた。
その日、
ドラゴニア帝国の新皇帝――
ビンセントが公式訪問として姿を現した。

過剰な威儀はない。
金糸の装飾も最小限。
それでも、
彼が放つ気配ははっきりと変わっていた。
――決意を、背負った男のもの。

玉座の間で迎えた
ソラリス国王と王太子アウレリオ、
そして王太子妃ラジワに向かい、
ビンセントは深く頭を下げた。
「本日は、御礼を申し上げに参りました。兄――クレオールに命を狙われた際、私を保護してくださったこと。そして、帝国の行く末に手を差し伸べてくださったこと」
静かな声だったが、
そこに嘘は一切なかった。

一息置いて、
ビンセントは続ける。
「兄の最期についても、ご報告しなければなりません」

ラジワは自然と背筋を伸ばした。
「クレオールは、刑を静かに受け入れました。取り乱すこともなく……」
ビンセントの視線が、
どこか遠くを見る。

「処刑台へ向かうその姿は、……憑き物が落ちたかのようにすっきりしていたのです」

玉座の間に、短い沈黙が落ちる。
「処刑の前日、兄は――自分の子どもたちと最期の面会をしました」
ビンセントは少しだけ微笑んだ。
「『あんな優しそうに笑うのを初めて見た』と、皆が言っていました」

「……そして、兄上は私に言いました。『彼らのことは、お前が責任を持って育ててくれ』と。ですから私は、兄に代わって、あの子たちを見守っていくつもりです」

重い決意。
それでも逃げない覚悟が
ビンセントの言葉にはあった。