意地っ張りな私が策士な王太子に囚われて

ドラゴニア帝国の使節団は、
その態度からして露骨だった。

深紅の外套。
皇帝の紋章を誇示するような装飾。
座るなり、
一切の前置きもなく切り出す。 

「皇帝陛下は、ソラリス王国の忠誠を改めて確認したいとお考えだ」

(……忠誠?ソラリスはドラゴニアの配下に下ったわけではないぞ)
アウレリオのこめかみがぴくりと動く。

「特に――ラジワ王太子妃殿下の扱いについて」

使節の男は、
さも当然のように続けた。
「彼女は元来、ドラゴニア皇族である」
「帝国としては、情勢安定のため一定期間、妃殿下には帝国に“滞在”していただきたい」

“滞在”。
その言葉の裏にある意味を、
この場の誰もが理解していた。
――人質。
――政治的拘束。

その場の空気が一気に冷え切る。

「……それは」
アウレリオが口を開こうとした、その時。

「ふざけるな」
低く、だが雷鳴のような声が響いた。

ソラリス国王だった。
「ラジワ王太子妃は、我が国の正式な王太子妃であり、もはやソラリスの人間だ」
「貴国の内情不安を理由に、我が国の王族を“返せ”だと?」

使節団の一人が鼻で笑う。
「皇帝陛下のお言葉ですので。従うのが、賢明かと――」